解説_Drawdown
Prop Firmにおける「Drawdown(ドローダウン)」とは、口座残高がピークからどれだけ減少したかを測る指標です。チャレンジ中もFunded後も、この制限を超えると即失格(Breach)になります。
Prop Firmのチャレンジでは、利益目標(Profit Target)を達成することよりも、このDrawdown制限を守り切ることの方が難しい場合が多いです。特にTrailing型のDrawdownは、計算方式を正確に理解していないと「なぜ失格したのかわからない」という事態になります。
Drawdownには Daily Drawdown(日次) と Max Drawdown(最大) の2種類があり、それぞれに計算基準(Type)が設定されます。この記事では、まずDailyとMaxの違いを整理し、次にTypeの分類(Static / Trailing)、そしてTrailingの細分化(基準時点の有無)を解説します。
Drawdown Typeの分類
Drawdownの計算基準(何を「現在値」「最高値」とするか)は大きく2つに分かれます。
Static(固定型)
初期残高を基準にした固定値です。口座開設時にBreach水準が決まり、その後は一切動きません。
例: 初期$100,000、Max DD 8% → Breach水準は常に$92,000
トレーダーにとって最も有利な方式です。利益が積み上がるほどBreach水準との差が広がり、実質的な余裕が増えます。$120,000まで利益を伸ばせば、Breachまで$28,000の余裕があります。
Trailing(追従型)
残高が増えると、Breach水準も追従して引き上がります。Staticと違い、利益を出してもBreach水準との差はDD%のまま広がりません(または広がりにくい)。
例: 初期$100,000、Max DD 8%。残高が$110,000に上がると、Breach水準も$102,000に上がる。利益$10,000出しても、Breachまでの余裕は常に$8,000。
Trailing型はさらに「何を基準にTrailingするか」で細分化されます。この細分化が、ファーム選びで最も重要なポイントです。
Trailing Drawdownの種類(基準値の違い)
Trailing型のDDは「High Water Mark(HWM / 最高到達値)」を追跡し、現在値がHWMからDD%以上下落するとBreachになります。Typeの違いは「HWMをいつ確定するか(基準時点)」で分かれます。
基準時点あり: EODスナップショット方式
EOD(取引日終了時、通常NY 17:00)にスナップショットを取り、その値でHWMを更新します。日中の変動はHWMに反映されません。違いはEODで「何を」見るかです。
| Type | EODで見る値 | 特徴 |
|---|---|---|
| Balance | 口座残高(確定損益のみ) | 含み損益が反映されない。最も緩やか |
| Equity | 有効証拠金(残高+含み損益) | EOD時点の含み損益も反映される |
| Higher B or E | BalanceとEquityの高い方 | 不利な方で判定。多くのファームの標準 |
EODスナップショット方式では、日中にどれだけ含み益が出ても、EODまでにBalanceやEquityが下がっていればHWMには反映されません。日中のピークは見逃されます。
例(Higher B or E): 日中にEquityが$115,000まで上昇。その後EOD時点でBalance $110,000 / Equity $108,000。HWMは$110,000(Balanceの方が高い)。日中の$115,000は無視される。
基準時点なし: リアルタイム追従
EODスナップショットを持たず、Equity(有効証拠金)をリアルタイムで追跡し続けます。
| Type | HWMが追跡する値 | 特徴 |
|---|---|---|
| Interday | Equity(リアルタイム) | 基準時点なし。ティックごとにHWMを更新。日中のピークも全て拾う |
EOD型との決定的な違いは、日中のピークを見逃さないことです。一瞬でも含み益が出ればHWMが上がり、その後戻してもHWMは下がりません。トレーダー側からHWMの上昇をコントロールする手段はありません。
例: 日中にEquityが$115,000に到達 → HWM = $115,000。その後含み益が縮小してEOD時点で$110,000でも、HWMは$115,000のまま。EOD型なら$110,000が基準になるが、Interdayでは$115,000が基準。この差分$5,000がそのままBreach水準の差になる。
この特性から、Interday型では「含み益を伸ばしてから利確する」という戦略が裏目に出ます。日中に含み益$15,000が出た時点でHWMが上がり、$10,000で利確してもHWMは$15,000分上がったまま。残る余裕はDD% - $5,000分縮小しています。正直、一番キツいタイプです。
Daily DrawdownとType
Daily DDの基準値も、Max DDと同じType分類に従います。
- EODスナップショット型(Balance / Equity / Higher B or E): 前日EODのスナップショット値が当日の基準。日中に利益が出ても基準は動かない
- Interday(リアルタイム型): 日中の最高到達点が基準。含み益のピークも拾う
リセット時刻は各社のサーバー時間で定義されます(例: NY 17:00 を採用する企業もあります)。
例(Interday): Daily DD 4%、当日の最高Equity $105,000 → 当日のBreach水準 $100,800
例(Higher B or E): Daily DD 5%、前日EOD時点のmax(B,E) = $110,000 → 当日のBreach水準 $104,500。日中にEquityが$115,000に上がっても基準は$110,000のまま
Trailingはどこまで追従するか
Trailingがいつまで続くかは、Daily DDとMax DDで異なります。これはTypeとは無関係の独立した話で、主にFunded後の口座で問題になります。以下は一般的なパターンであり、ファームごとに例外があります(Daily DD自体がないファームも存在します)。
- Daily DD: 失格(Breach)するまで追従が続く。ロックなし
- Max DD: 開始残高まで。Breach水準が開始残高に到達した時点でTrailingが停止し、以後Staticと同じ挙動になる
例: 初期$100,000、Max DD 8%。TrailingがBreach水準$100,000に達した時点で固定。以後はどれだけ利益が出てもBreach水準は$100,000のまま
難易度の序列(トレーダー視点)
Trailing型のDDは、Typeによってトレーダーへの厳しさが大きく変わります。厳しい順に並べると:
- Interday — リアルタイム追従。日中のピークを全て拾う。逃げ場なし
- Higher B or E — EODスナップショット。BとEの不利な方で判定される
- Equity — EODスナップショット。含み損益も反映されるが、日中のピークは拾わない
- Balance — EODスナップショット。確定損益のみ。含み益も日中ピークも無関係
- Static — 固定値。利益が出るほど余裕が広がる
ファーム選びの際は、DD%だけでなくTypeも確認してください。同じ「Max DD 8%」でも、StaticとInterdayでは実質的な厳しさがまったく違います。DD%の数字だけ見て「緩い」と思ったら、Typeが Interdayで地獄だった…というのはよくある話です。